• 暮らすように旅したい
プロローグ〜2004年4月

 偶然見た韓国映画の“동감(ドンガン、同感という意味、邦題:リメンバー・ミー)”が妙に心に残り、そういえばこんなに近くなのにこの国の事を何も知らないなあと思い韓国に行く事にしました。
気ままな独り旅なので、ノンビリ過ごせる所にしようと思って済州島に行く事にしました。
 格安航空券を取り敢えず購入し、宿泊先を検討し比較的安価な新済州にある済州グリーン観光ホテル(当時の名称)を予約しました。

韓国料理バイキング

 済州島空港に降り立ち簡単な入国審査を済ますと右も左もわかりません。タクシー乗り場を探してホテルに向かいました。ホテルまでは30分足らず、2,700ウォン(約270円)でした。
 ホテルで少し休んだ後、スーパーマーケット(Eマート)に行きました。海外に行くたびに日本で公開されていないその国の映画のDVDを購入するようにしているのでDVDをいくつか買おうと思っていたのですが、あまり置いて無くCDを1枚だけ買いました。他に見るものが無かったので地下の食料品売り場に行きました。ここは日本のデパ地下と同じ感じですが試食がとても充実しています。端から見て行く度に試食を進められるので、一通り回ると韓国料理フルコースでお腹いっぱいになります。途中喉が渇いたので試飲のお茶やよくわからないドリンクを飲み、ラストのデザートはブドウで締めました。
 たまたま知り合った地元の人から高校時代に学校帰りに今日は奢りよ、なんて言って友達をデパ地下の試食に誘ってたんだなんて冗談を聞きました。
 全て只だと悪いのでお土産に多少買い物もしましたよ。

 Eマートを出て、ぷらぷらと歩いてホテルに向かう途中の公園のベンチでぼーっとしながら、はてこの後どうしようか...旅行の目的は観光ではなく短期間ですがその町で暮らすことですから何もしなくていいのです。
 その後、CD&DVDショップだと思って入った店はレンタルビデオ屋だったので、ロトクジを6,000ウォン(約600円)分買ってホテルに帰りました。1等は400億ウォン(約40億円),当選発表は明日です。

 夜は定番ですが骨付きカルビを食べに豊田(プンジョン)に行きました。付け合わせに様々なキムチやナムル、味噌、ニンニク、薬味にサンチュがついてくるのでカルビだけを頼めば十分です。ピビムネンミョン(スープ無し冷麺)を頼み、焼き肉をこれにからめて食べるとまた違った味でおいしく食べられます。牛肉タコ鍋も頼んでしまったのですが、お腹いっぱいでちょっと残してしまいました。日本の感覚で頼んではだめですね。
 ちなみに韓国の焼き肉といえばカルビで他の肉を頼むのは邪道らしいです。カルビ以外の肉を食べるなら日本で食べたほうが良いそうです。
 腹ごなしに夜の街を遠回りしながら散歩してホテルに帰りました。

バスで市場へ
市場へ行く途中の風景
市場へ行く途中の風景
バス停近くの店
バス停近くの店

 翌日はせっかく済州島に来たのだからと海を見に行きました。ダイビングポイントもあるので今回の旅行は下見も兼ねているのです。 
 通りに出てバス停を探しますが、市内循環バスばかりで長距離のバスがありません。取り敢えず市内循環バスに乗り島の周回道路まで出る事にしました。大通りに出た所でバスを降りるとそこは市場(Grandma’s Market)への入り口でした。
バス停近くの屋台でおでんとトッポキを食べました。この屋台は母娘ふたりでやっているようで何を頼んでもひとつ500ウォン(約50円)ととても安かったです。

市場の様子
市場の様子
Grandma's Market
Grandma’s Market

 市場は月に2回だけ開かれるそうでラッキーでした。市場はとても広く、果物、野菜、肉、魚介類等の食品素材から、漢方薬、菓子、衣服、化粧品、家具、農機具、電気製品、様々な屋台にペットコーナとして金魚、ひよこ(ピンク、緑、オレンジ等に塗装済み)、ハムスター、豚、子犬から大型犬まで何でも売っています。

ポン菓子屋
ポン菓子屋
焼きまんじゅう屋台
焼きまんじゅう屋台

 中に蜂蜜の入っためちゃくちゃ熱い鉄板焼まんじゅうの様なものを食べながら市場を彷徨いました。ポン菓子を製造直売している店もありました。
 お婆さんからサンチュを1,000ウォン(約100円)で山ほど買いました。レストランで出て来るのとは違って庭先で無農薬で栽培した(らしい)ものなので、形は小さいけど葉に厚みがあり色もとても濃い緑をしています。

犬コーナ
犬コーナ
予防接種をしていないので撫でたり,舐められた後は石鹸で手を洗う必要があります.
予防接種をしていないので撫でたり,舐められた後は石鹸で手を洗う必要があります.

 その後バス停に戻ってバスを待ちました。バス停には路線図があり、バスには番号が書いてあるのですが、どのバスがどこに行くのか全くわかりません。小さな島ですからどこに行ってもタクシーさえ拾えればホテルに戻れるだろうという気楽さからバスの旅を楽しみました。
 街を出ると長閑な景色が広がります。途中の町で学校帰りの高校生達がぞろぞろ乗ってきました。携帯電話で写真を撮り合ったりしています。こっちも負けずに携帯電話(ガラケー)で車窓の風景を撮影しました。
 車なら30分足らずの所を1時間以上かけて漸く目的の場所に到着しました。次回来る事があったらレンタカーを借りた方が良いな。

ガキンチョ3人組
ガキンチョ3人組
手前から奥へグラデーションが特徴の海とトルハルバン
手前から奥へグラデーションが特徴の海とトルハルバン

 海に向かって歩いて行くとシーズンオフなので殆ど人通りがありません。コンドミニアムもとても暇そうです。一頻り景色の撮影を終え、水飲み場でさっき買ったサンチュを洗っていると学校帰りの小学生のガキンチョ3人組が手を泥だらけにして近づいてきます。手を洗いたいらしくてちょっと待ってろとサンチュを洗い終わるまで待たせて、しばらく会話をした後(全く言葉は通じませんが)、彼らは手を洗い終わると速攻でまたビーチで砂遊びです。いったい何のために手を洗ったんだか...

ガキンチョ3人組
ガキンチョ3人組

 後に知った事ですが韓国の教育はとても熱心で、昔は中学校で学んでいた内容が小学3年生から教わるように変わっていったそうです。国力は教育からとの言葉通り韓国の経済は益々発展する事は間違いないでしょう。全く何のポリシーも無いどこかの国の文部科学省に教えてあげたい程です。
 小学3年生にもなれば10箇所くらい塾に行くのもざらだそうで、学校から帰ってくれば親は塾から塾へと車で子供を送り届け、帰宅は毎日夜10時過ぎになるのも珍しくないそうです。

 洗ったサンチュを袋に積め散歩を続け、1件の食堂の前に来ました。電気は消えていてやってる気配がありません。鍵はかかっていないのでドアを開け中に入ると台所の奥からおばちゃんが出てきました。やってるらしいので座敷に座り、済州島名物の黒豚三段バラ肉(サムギョプサル)を頼みました。
 サンチュは持参したからと見せると、サービスで付くのにというような事を言っています。
 肉は厚みがバラバラ、毛の生えた皮膚まで付いています。皮膚を見せる事で黒豚である事を示し、厚みがバラバラなのは機械でスライスしていないということです。
 市場で買ったサンチュと肉の組み合わせはとてもおいしく、生ニンニクをおかわりし、一生分くらい生ニンニクを食べました。この店は私以外とうとうひとりのお客も来ませんでした。こんなに安くて美味しいのに...

翰林公園(ハルリムコンウォン)内の天然記念物の洞窟
翰林公園(ハルリムコンウォン)内の天然記念物の洞窟

 食堂を出て商店で100ウォン(約10円)で買ったアイスを食べながらとぼとぼ歩き植物公園を見たりした後、夕方になったのでタクシーを拾ってホテルに帰りました(19,200ウォン(約1,920円)、チップ無し)。

 夜になってもお腹がいっぱいだったし昨日買ったロトクジも外れたので、深夜にファミリーマートでキムチ&プルコギバーガーとキムチおにぎりを買って部屋で食べて寝ました。

カフェでのんびり&垢擦り初体験

 早くも最終日、飛行機は夕方なので近所でゆっくり過ごす事にしました。目が覚めるまで寝て、12時にチェックアウトした後、地元の人しか行かないような屋台に毛の生えた程度の小さな食堂(日本人がいる事に他のお客さんがビックリしてました)でラーメンを食べようと思ったら無いと言われて、仕方なくおでん、トッポキ、のり巻、天ぷら盛り合わせを食べました。この店のメニュー全部です。
 その後、漸く1件のCD&DVDショップを見付けて、“동감”のDVDあるかと聞くと、違う동감2という映画を差し出され、結局동감のDVDは置いてありませんでした。今度ソウルに買いに行こうっと...(日本でも売ってるけど)
 時間が余っているので用もないのに免税店に入り、当たり前ですが外人しかいない(韓国人のお客が1人もいない)異様さに早々に出てきました。
 免税店の前のスタバの様なカフェに入り、ファッション雑誌をめくりながら暫く過ごしました。女性向けファッション雑誌にはAudi A8の広告が一面に載っています。そういえばここで日本車は1台も見かけていません。韓国人にとって外車は高級車なのでどうせ買うならドイツ車が良いそうで、日本車は全く人気無いそうです(当時)。
 その後、この街で一番高級と言われるホテルのサウナに入り、湯船に浸かっているとゴツいおじさんが「擦っていくかい(多分)」というので垢擦りを初体験しました。今度垢擦りするときは別の店にしようっと。
 飛行場まで近いのでぎりぎりまで風呂につかった後、タクシーを拾って空港へ向かいました。

エピローグ

 年度末の忙しさから、衝動的に独り旅に出かけてしまいました。
初めての国でしたが韓国は想像通り情に厚い国だと感じました。観光名所を訪れる事も無く、極ありふれた韓国の日常、そして文化の一端に触れる事ができたと思います。

 ここで知り合った地元の人がこんな事を言っていました。“お互いの国の良い所だけを取り入れればみんな良い国になるのに。”

 好きな国がまたひとつ増えました。


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